エミノメモ

転勤族のぼっち主婦の日々

読書メモ:「むかしむかしあるところに、死体がありました。」 青柳碧人

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2020年本屋大賞10位✨

 

■2020年 本屋大賞ノミネート

紀伊國屋書店スタッフが全力でおすすめする  キノベス!2020 2位

読書メーター OF THE YEAR 5位

本の雑誌ミステリーベスト 6位

週刊文春ミステリーベスト10 第7位 (文藝春秋

■ミステリが読みたい!2020年版 第8位 (早川書房

■2020本格ミステリ・ベスト10 第9位 (原書房

 

 

誰もが知っている日本昔話が新しいミステリーに。

 

表紙の五月女ケイ子さんの装画から、コメディーかなと思っていたのですが、、、

新感覚のミステリーです!

昔話に登場する小道具や設定をうまく使った新感覚のミステリーでした。

後味も悪い…

 

 

※ネタバレあります

 

一寸法師の不在証明

一寸法師×アリバイトリック〜

大臣家の春姫様を鬼から救った一寸法師。鬼が持っていた打ち出の小槌で大きくなり、春姫様と結婚することに。

冬吉という男が殺害され、一寸法師は容疑者として浮上。しかし一寸法師には鉄壁のアリバイがあった!冬吉が殺害されたといわれる時間、鬼の腹の中にいたのだ。

 

一寸法師の無罪を証明するのかと思っていたら、まさかの展開でした。

殺害トリックのところは私には複雑で何回か読み返して何とかわかったような。

打ち出の小槌を使って、というのはおもしろかった。

黒三日月は謎だったなぁ。聞き込みとかどうやってしたんだろう。

 

 

花咲か死者伝言

〜花咲かじいさん×ダイイングメッセージ〜

「枯れ木に花を、咲かせましょーう」

満開の桜咲かせ、お殿様や村の人たちは大喜び。

お腹を空かせた犬はお爺さんとお婆さんに飼われることになり、次郎(じろ)と名付けられた。前に飼っていたしろに次ぐ二匹目ということで次郎。

数日後、お爺さんは死体になって発見された。

お爺さんの手にはぺんぺん草が握られていた。

これはお爺さんが誰が自分を殺したかを知らせようとしたのか。

 

みんな怪しく見える中、一番犯人であってほしくない人が犯人でした。

お爺さんに何か秘密があったのかなと思ったりもしましたが、最後までお爺さんは優しいお爺さん。

次郎が突然殺された時はびっくりしましたが。

あの後どうなるのでしょう。次郎が死ぬ前に準備した復讐は。

 

 

つるの倒叙がえし

〜つるの恩返し×倒叙トリック〜

雪が降る日、弥兵衛は借金の取立てにきた庄屋を鍬で殴り殺した。死体はひとまず奥の部屋の襖の向こうに隠した。

こつこつこつと戸を叩く音。戸を開けると一人の女が。泊めてくれたお礼に機織をすると言う。

とんとんからりん、とんからりん。

つうという女が織った反物はそれは美しく、軽く、珍しいものだった。

 

途中??ってなるところがあったけど、なるほど!

死体はいつ埋めたのかなとか、弥兵衛さん性格悪いなとか。

最初に、弥兵衛が「そうでなければ、おらは、庄屋様を殺さなきゃなんねぇ」と言い出した時は、この人いきなり何言うの?って思ったけど、最後まで読むと、そういうことか〜と。

でも最後まで読んで、弥兵衛は襖の奥に何を隠してたの?と思って、読み返したら見落としてました。

友達から預かった子宝祈願の像を一応約束守って、誰にも見られないように持っていたんですね。

 

 

密室竜宮城

〜浦島太郎×密室トリック〜

浜辺で子どもたちにいじめられていた亀を助けた浦島太郎は竜宮城に連れて行ってもらい、乙姫や竜宮城の生き物たちからお礼に宴を開いてもらう。

宴の後、眠り込んでいた浦島太郎が目を覚ますと伊勢海老のおいせが死んでいるのが発見された。

部屋は内側からかんぬきがかけられ、一つしかない窓は外に珊瑚がびっしりと張り付き、開けることはできない。

浦島は亀たちに依頼され、犯人を突き止めることに。

 

最後ざらっとしたな〜。すごくおもしろいのですが、「ととき貝」の力が後出し的な気がする。

それがわかった時の「わかし」の存在がちょっと恐ろしかった。

最後まで誰かわからなかった上半身裸の中年の男。鏡見て叫ぶよね。

乙姫様が事件にもう少し絡んでくるのかと思いましたが。浦島を部屋に呼んで、ゆっくり寝かせてくれたのはただの親切だったのかな。

 

 

絶海の鬼ヶ島

〜桃太郎×クローズド・サークル〜

桃太郎に退治された鬼ヶ島の鬼たち。生き残ったのはわずか3頭

時が流れ、鬼ヶ島には13頭の鬼が住んでいた。

ある日、鬼茂という鬼が崖の下に落ちて死んでいるのが見つかった。

犯人探しが始まるが、そこから次々と鬼たちが殺されていく。

そして最後の一人となった鬼太も…

 

アガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」も思い出します。あちらも13人だったのかな。

鬼がたくさん出てきますが、全員名前に鬼がついていてわかりにくい!

村長の鬼厳、鬼おばば、鬼郎、鬼太、鬼松、鬼茂、鬼三、鬼菊、鬼百合、鬼兵、鬼藤、鬼梅、鬼広

みんなが殺されていく中で疑心暗鬼になり、笑いながらおかしくなる鬼広や、弟を疑って襲いかかってくる鬼郎。

犯人がわからなくて、途中ホラーかと思った。

そして誰もいなくなったのオマージュなら、最後犯人も死んだのかな。

最後の章で、犯人のことやこれまでの真実が語られますが、思ってもみなかった真実でした。

桃太郎がまさか…!でした。

ちょっと想像できないのですが、「鬼滅の刃」の堕姫のような鬼ならまぁわかる。

これまでの章に出てきた天狗鍬や鶴の羽衣、打ち出の小槌も出てきました。結局事件には関係なかったですが。

 

 

全ておもしろかったですが、つるの倒叙がえしが一番好きでした。

このシリーズまだまだ読みたい!

桃太郎や浦島太郎といえばauのCMのイメージがあるので、それだとまだ金ちゃん出てないしね。

他にもグリム童話アンデルセンなど面白そう。

グリム童話は元々ブラックな感じがあるので合いそうです!

読書メモ:「盤上の向日葵」 柚月裕子

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柚月裕子さんの「盤上の向日葵」読了しました。

初めての作家さんです。

 

2018年の本屋大賞2位の作品で、気になったので、図書館で予約していました。

 

 

〈STORY〉

埼玉県天木山山中で発見された白骨死体。遺留品である初代菊水月作の名駒を頼りに、叩き上げの刑事・石破と、かつてプロ棋士を志していた新米刑事・佐野のコンビが捜査を開始した。

それから四か月、二人は厳冬の山形県天童市に降り立つ。向かう先は、将棋界のみならず、日本中から注目を浴びる竜昇戦の会場だ。

世紀の対局の先に待っていた、壮絶な結末とはー⁉︎

(「BOOK」データベースより)

 

 

〈REVIEW〉  ※ネタバレあります

遺体とともに埋められていた将棋の駒の持ち主を捜査する石破と佐野。

それと並行して語られる上条桂介の過去。

 

竜昇戦が行われている天童市は、毎年ふるさと納税をしていたので、馴染み深いです。

さくらんぼと「3月のライオン」グッズ目当てです。

 

桂介の出身の長野県諏訪市も、息子の病院で長野には何回か行っていて、諏訪湖のホテルにも2回宿泊しました。

 

将棋は、駒の動かし方がわかる程度の初心者です。

時々主人と指して、素人同士何となく指している感じです。

 

この本は、将棋界の「砂の器」と言われているそうですが、桂介の過去が語られていくと、その理由がわかります。

 

母親が自殺し、父親は桂介に新聞配達をさせ、暴力を振い、ギャンブルに依存。

そんな時出会ったのが、唐沢。

唐沢は自身が捨てた将棋雑誌を、回収場所から抜き取っていた桂介に声をかけます。

それから週に一度、将棋を指し、食事やお風呂を世話し、虐待されていることに気付きながらも、見守ることしかできない。

桂介の将棋の才能に気付いた唐沢は、自分が全て面倒を見る覚悟で、奨励会に入会させようとしますが、父親の庸一に邪魔され、断念します。

そこで、桂介と唐沢の交流も途絶えてしまいます。

 

あそこで父親を捨てて、唐沢のもとに行っていたら違う未来があったのに。

どんなに酷い親でも実の父親を見捨てることはできないのか。

終盤に桂介の出生の秘密も語られますが、そこまで酷い生い立ちにしなくても…

結局、“いかれた血”に勝てず終わってしまうのか。

 

上京してからの唐沢との関係は、手紙のやり取りだけ、唐沢が亡くなった時も、お悔やみの手紙があったとありましたが、何だか薄いような。

後半は東明とのことばかりで、もう少し唐沢に登場してほしかった。

 

東明の遺体を埋め、香典代わりとして駒を一緒に埋めた理由もよくわからなかった。

恩師の唐沢から譲り受けた大切なものなのに。

東明に騙されて一度は失い、必死にお金を貯めて買い戻したものなのに。

駒がなければ、捜査が桂介に及ぶことはなかっただろうに。

 

竜昇戦のラストが、二歩の反則負けというのはびっくりして、私も「あっ」と声を出しそうになった。

そしてその後の東明との最後の一局の回想シーン。

なるほど、です。

 

刑事コンビは最後まで石破が好きになれず。

そしてラストは容疑者を眼前に、情けない…

 

 

唐沢が教師になろうと思ったきっかけは、小学生の時の担任の先生との出会いにありました。

学ぶことの楽しさを教えてくれた、担任の高田の言葉が心に残りました。

 

「世の中には、知らないことがたくさんある。知らない国、知らない街、知らない人。いままで知らなかったことがわかると、すごく嬉しくなって、もっといろんなことを知りたくなる。その楽しさを知らないなんて、人生の喜びの半分以上を捨てているようなものだぞ」(p63-64)

 

「もし、君が私に感謝しているのなら、その気持ちを、以前の君と同じように、知る楽しさを知らない子に教えてあげなさい。私も君と同じように、ある人から知る喜びを教えてもらった。そして、私は君に知る喜びを教えた。今度は、君の番だ」(p65)

 

高田が知る喜びを誰かに教えてもらい、唐沢も高田に教えてもらった。

そして唐沢も教師になり、たくさんの教え子を持ち、定年後は桂介と出会い、将棋を教えた。

 

同じように桂介にも、誰かに将棋の楽しさを伝えていってほしかったなと思います。

 

 

9月に千葉雄大くん主演でドラマ化されるみたいです。

千葉くんも意外でしたが、佐野を女性にするっていうのが…。

唐沢の柄本明さんや、東明の竹中直人さんは合う気がします!

 

2019年9月8日(日)22時〜

毎週日曜日、全4回

BSプレミアム

 

 

読書メモ:「AX アックス」 伊坂幸太郎

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図書館で予約していて、やっと手元に。

伊坂さんの殺し屋シリーズ。

 

〈STORY〉

最強の殺し屋は―恐妻家。「兜」は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない。一人息子の克巳もあきれるほどだ。兜がこの仕事を辞めたい、と考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。引退に必要な金を稼ぐため、仕方なく仕事を続けていたある日、爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。『グラスホッパー』『マリアビートル』に連なる殺し屋シリーズ最新作!書き下ろし2篇を加えた計5篇。(「BOOK」データベースより)

 

〈REVIEW〉  ※ネタバレあります

伊坂さんの殺し屋シリーズ、間違いない。

視点が変わる時の判子見たら、面白い予感しかない。

でも「兜」の判子しか出てこなくて、今までの視点がコロコロ変わるのとは違うなと思っていたら、最終話で息子・克己の視点に。

妻の視点も見てみたかったな。

 

殺し屋の話なのに、恐妻家のエピソードが強くて緊張感がない。

四人の敵に囲まれて攻撃されているのに、ステップを踏んでいるような軽快さがある。

 

ボウガンや奈野村のオチには途中で気付いてしまったけど、マンションの管理人さんがあんなに重要になってくるとは思わなかった。

プライバシーには立ち入らない主義と言いながら、約束はちゃんと守る、良い仕事してくれました。

 

主人公の兜は死んでしまったけど、ラストはまさに、“一矢報いる”ことができて、良い終わり方でした。

兜と奥さんの出会いも良かった。

兜がどんな人生を歩んできたのか、過去も読んでみたい。

 

最後の母と息子の会話も好きでした。

“「親父も、おふくろにいつも気を遣って偉かったと思うよ」

「あの人が?わたしに気を?いつ?」

母が目を丸くし、のけぞるようだったから、むしろ僕のほうがのけぞった”(p303)

 

ほかにも心に残った言葉。

 

“「やれるだけのことはやりなさい、それで駄目ならしょうがないんだから」”(p150)

 

“「父がこの世で一番怖いのは-母ですから」(p288)

 

“死ぬのは怖くない。だが、死んだら妻が怒るかな、と考えた時だけ、少し怖くなった”(p290)

 

 

檸檬や蜜柑や押し屋の槿の名前も出てきて、過去作も読みたくなった。

今なら檸檬きかんしゃトーマスの話もわかりそうだし。

 

ただ、一つ一つの話をもう少し詳しく読みたかった。

行方不明の山田先生は、本当に美人教師に殺されたのか、近所の家は爆弾犯の仲間だったのか、カブトを狙っていたスズメバチはどうなったのか、身代わりの死体を依頼したDIYのその後、そもそも自分で用意できるのではないか…、兜が依頼で取ってきた箱の中身など、気になることがたくさん残ってしまった。

 

兜の過去で、物騒なことをやる時には雨なことが多い、とあったので、死神が近くにいたりして、と思ったり。

 

 

★★★★★