図書館で予約していて、やっと手元に。
伊坂さんの殺し屋シリーズ。
〈STORY〉
最強の殺し屋は―恐妻家。「兜」は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない。一人息子の克巳もあきれるほどだ。兜がこの仕事を辞めたい、と考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。引退に必要な金を稼ぐため、仕方なく仕事を続けていたある日、爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。『グラスホッパー』『マリアビートル』に連なる殺し屋シリーズ最新作!書き下ろし2篇を加えた計5篇。(「BOOK」データベースより)
〈REVIEW〉 ※ネタバレあります
伊坂さんの殺し屋シリーズ、間違いない。
視点が変わる時の判子見たら、面白い予感しかない。
でも「兜」の判子しか出てこなくて、今までの視点がコロコロ変わるのとは違うなと思っていたら、最終話で息子・克己の視点に。
妻の視点も見てみたかったな。
殺し屋の話なのに、恐妻家のエピソードが強くて緊張感がない。
四人の敵に囲まれて攻撃されているのに、ステップを踏んでいるような軽快さがある。
ボウガンや奈野村のオチには途中で気付いてしまったけど、マンションの管理人さんがあんなに重要になってくるとは思わなかった。
プライバシーには立ち入らない主義と言いながら、約束はちゃんと守る、良い仕事してくれました。
主人公の兜は死んでしまったけど、ラストはまさに、“一矢報いる”ことができて、良い終わり方でした。
兜と奥さんの出会いも良かった。
兜がどんな人生を歩んできたのか、過去も読んでみたい。
最後の母と息子の会話も好きでした。
“「親父も、おふくろにいつも気を遣って偉かったと思うよ」
「あの人が?わたしに気を?いつ?」
母が目を丸くし、のけぞるようだったから、むしろ僕のほうがのけぞった”(p303)
ほかにも心に残った言葉。
“「やれるだけのことはやりなさい、それで駄目ならしょうがないんだから」”(p150)
“「父がこの世で一番怖いのは-母ですから」(p288)
“死ぬのは怖くない。だが、死んだら妻が怒るかな、と考えた時だけ、少し怖くなった”(p290)
檸檬や蜜柑や押し屋の槿の名前も出てきて、過去作も読みたくなった。
ただ、一つ一つの話をもう少し詳しく読みたかった。
行方不明の山田先生は、本当に美人教師に殺されたのか、近所の家は爆弾犯の仲間だったのか、カブトを狙っていたスズメバチはどうなったのか、身代わりの死体を依頼したDIYのその後、そもそも自分で用意できるのではないか…、兜が依頼で取ってきた箱の中身など、気になることがたくさん残ってしまった。
兜の過去で、物騒なことをやる時には雨なことが多い、とあったので、死神が近くにいたりして、と思ったり。
★★★★★